カレーライスでモノボケ
川崎の家ー
そこに暮らす、祖母の認知症が進行しています。
そして、統合失調症の叔父が居候しています。
僕は実家の宮城から、その家に環境を移したのです。
祖母がデイサービスに行くとき、同居している叔父が見送っています。ご飯の用意は、孫の僕がやります。
僕は祖母と一緒にご飯を食べながら、色んな会話をします。
一緒にいて楽しい。そう思うだけでした。
普段はカレーライスを作ることが多いのですが、ある日祖母が食後に体調を悪くして嘔吐してしまいました。僕はひたすら、自分のカレーライスで胃がもたれてしまったと思っていました。「おいしい、おいしい」と言って食べてくれていたので、気を遣わせたと思うと尚更、自分を責めました。
もうカレーライスは作らないと思いながら母に相談しました。
「悪い天気が続いていたり、祖母も胃が弱っていたり、原因は色々あるのだから」と慰めてくれました。
しかし、カレーを作るのがちょっと怖い・・・。
次の日、祖母にデイサービスを休んで貰いました。
ゆっくり休めば大丈夫だろうと心配していたら、大丈夫どころか散歩をしに行ってしまいました。しかも、よりによってデイサービスまで行って皆に手を振って帰って来たそうです。そして・・・
「何で今日ばあちゃんはデイサービスにいなかったんだ?」という決めゼリフまで出てきました。
「ばあちゃんは体調不良で休んでいるんだから、元気に出かけるんじゃないよ!」
そう注意したら、ようやく就寝してくれました。
祖母は本物の漫才師です。
叔父も、祖母のために自分の時間を割くことも勿論あります。ですが、祖母に対してよく
「俺には全然感謝がないな。」
と堂々と言うのです。
なぜ叔父がそんな気持ちになり、祖母がお礼を言わないのもなぜなのか、はっきり分かる気がします。
僕はやるべきこととして何かをしても、「やってあげた」とは思いたくないし、思えません。「やってあげた」の背比べが始まると、人との目線を掛け違えてきて感謝も謝罪も出来ない気分になるからです。
僕らは祖母に居候させて貰っています。だから祖母のために何か役割を持つのは当たり前です。
同じ時間を、一緒に過ごしているだけなのです。
それ以上でもそれ以下でもない人に「ありがとう」と「ごめんなさい」が素直に言えると、僕は思っています。
その後日、またカレーライスを作ってみました。
祖母の体調不良が僕のせいではないとしても色々と反省したので、油を少なくしたり煮込む時間を多くしたりして作りました。
そうしたら・・・
祖母は絶好調にギャグを言って笑っています。
「カレーライスのライスってどういう意味だ?ライスは・・・お米?ご飯?ばあちゃん英語分かるから頭いいでしょ。」
「分かるのライスだけじゃん。」
祖母のボケにツッコミながら、心の中でピースしました。