りんりんの運命の出会い日記
その四
自宅から最寄りのバス停に着くと、女の子、といっても二十歳にはなっているだろうか、肩丸出しであろうビスチェワンピースにウサギの毛皮コートを羽織った女の子がバス停ベンチに座っていた。
「ムダなお肉がなくていいわね〜。でも、毛皮来ているとはいえもう少し首元までしっかりと羽織らないと風邪引くわ」とオバサンの心配は尽きない。
そうこうしていると、目的のバスが来たのでわたしは乗る体制に。彼女はちょっと迷うような様子でゆっくり立ち上がった。
その時に、彼女のバッグに付いているヘルプマークがチラリと見えた。
「あの〜」と言う彼女の声と「乗らないの?」という私の声がぶつかった。
「はい?」と私が聞くと、「このバス、弁天通りに行きますか?」と彼女。
「…弁天橋じゃなくて弁天通り?はて、どこかしら…?」
「あ、関内駅でもいいんですけど。」
「関内駅なら真ん前には着かないけど、馬車道で降りて、数分歩けば関内駅には着くけど?」
「あ、じゃ、乗ります。」
と、彼女は私と一緒に乗り込んだ。
土曜日でも夜8:30過ぎとなると、バスも空いている。
乗り込んだ後も、私は彼女の近くに座り、
「馬車道で降りたら、バスが走っていく同じ方向に歩くと、すぐに大きな交差点があるから、右に渡って行くのよ。そうすると京浜東北線の高架が見えるから。高架下までいって左を見れば関内駅よ。」とおばさんグーグルマップに。
「ありがとうございます。」
と一段落ついたところで今度は私。
「ちょっとお尋ねしたいのだけど、さっきチラッとヘルプマークが見えたんだけど、わたしのヘルプマークは区役所でもらったのだけど、とってもチャチでもう2枚ダメにしてるの。」
「あ、知ってる〜。ペニョペニョですよね。横浜は、あ、神奈川県は、だったかな、エコで、あの紙一枚にしたんですって。でも弱いんですよね。」
「あなたのはよく見るタイプのしっかりしたものじゃない?どこで手に入るのかしら?」
「これは、東京じゃないと…。大江戸線の駅で駅員さんに言うと事務所から出してきてくれましたよ。横浜にはないから、3つまとめてもらって来ちゃいました。」
「そうなのね。教えてくれてありがとう。」
そうこうするうちに、私が降りるバス停に近づいてきたので、「次停まりますボタン」を押した。
すると、彼女、ヘルプマークをサッと外し、「さっきはありがとうございました。あの、これよかったらどうぞ。」とヘルプマークを私の手に。
「あら、でも、そうしたらあなたが…」
「わたしは家にまだあるから。東京に貰いに行くのも大変でしょうから。」
「ありがとう。それじゃいただきます。」と素直にいただくことに。
私にはヘルプマークというより、温かい思い出の、温かいハートマークだ。